リハーサルスタジオにおけるベースアンプについての考察

Studio Solaのベースアンプが、
オーソドックスかつシンプルな理由

よくこんな質問を受けます。

『Studio Solaは、制作を行うのもあってギターアンプが豊富で色々と選べて楽しいのですがその一方でベースアンプは、どの部屋もHARYKE HA2500一機種に統一されていて簡素に思えます。なぜですか?』

鋭い着目点です。

この問いに対して答えるのと同じように、講習会でもベースのサウンドについて考察する時に、同じことを話します。

『皆さんは、ピアノの音色が個性的だったら、音楽がやり易いですか?』

『先週入ったこあの部屋と、今週のこの部屋でピアノの音色が違っていたら、ギターサウンドやボイシングで音域の見極めがし易いですか?』

答えは、NOに決まっています。

いつからでしょう、ベースの音色に個性を求める事が重要な事だと思われ始めたのは?

ベースは本来、音色に個性を求める楽器ではありません。ベースは楽器としての音や機能そのものに極めて高い性能を求められる重要な楽器です。だからこそ、その役割からこれは明らかに正解です。

最初に断っておきます。このコラムは、バンドが音源制作やライブにおいて音楽的な成功を形にする為の手引きとして示しています。

エフェクターを使った音色の変化を楽しんだり、機材を集める事を趣味としている人には感覚の違うな話です。ここはあくまで理論的に正しいと説明できる、長年制作の業界で一般的に行われてきた方法論としての話です。趣味における音楽の楽しみ方と、現場の目的は明らかに違います。そこをはっきりと区別した上で読んでいただければ幸いです。

こういう前提をしなければいけないのには、世の中には特に商業的な結果を残さなければいけない活動の世界やジャンルによっては、ギターに対抗したかの様より積極的ベースヒーロー〟の存在も必要かも知れませんし、雑誌やネットでもベースにも大層なエフェクターボードを組んで原音から遠い音色を構築する事が、まるで一般的かの様に掲載されている背景があります。ヒーローに必要不可欠な飛び道具としてのサウンドを求める人に売る目的で作られた機材が、いつの間にかあたかも音質向上を謳うかのような文句で売られていることが錯や誤解の元凶でしょう。

制作やライブで音楽的な結果を残す必要のある人は、ここで冷静にならなければいけません。なぜなら並大抵の機材では繋げば繋ぎほどに確実に音質を損ねるからです。

誤解して頂きたくないのはこれは単に、本来の飛び道具としての役割と、ベースという楽器としての役割を分けて考える事ができる人にのみ、正しいバンドサウンドは成立するという話です。

音楽のアンサンブルや音源のミキシングバランスを整えるような、音楽での日常とも言える大半の場合においてベースの役割というは、音色で個性を出す事よりももっともっと重要な事が少なくとも3つ存在します。

その中で最も重要なのは、当然ながら音程です。そして音量、音価です。近年、制作をしていると音色で音程、音量、音価を損ねている人が実に多いことに驚かされます。確実に言える事は、そんな考えでは制作の失敗は明らかだというです。

プリプロでもゲネプロでも、よくこういう話になります。

『みんなは、音色を仕上げに来ているのですか? それとも楽曲を仕上げに来ているのですか? 後者でなければ、制作もステージも結果には繋がりませんよ』

もし、これが音源制作中なら中止せざるを得ません。何でも後から修正して帳尻を合わせてフォーマットに嵌め込んだ製品化するだけで良いというなら話は別ですが。

ベースのサウンドが、ベース本来の役割を果たせていないバンドで、ギターや鍵盤楽器、メロディー、ハーモニーパートのアレンジやアプローチを決めるのは至難の技です。

ドラムやベース、ピアノというベーシックであることが非常に重要なパートだからこそ、楽器や機材はオーソドックスでシンプルなチョイスである事が重要となります。

ここでようやくベースアンプの話に戻ります。

HARTKE HA2500を選んでいる理由は、個体差も極めて少なくオーソドックスで安定したソリッドアンプだからです。良い意味で個性がないアンプだからです。バンドのリハーサルやアレンジにおいては最適解でした。

ベースは楽器の状態と弾き方が最も重要な楽器ですので補正すら行わない済むのが理想です。よって個人的にはEQも付いていなければ、もっとサウンドの核心と向き合えるので良いと思っています。

なぜなら、ライブステージではツマミやEQが全く付いていないDIに委ねるわけですから。楽器の状態と手元とフレーズでまずは対応、これがベースに限らず楽器の基本であり、プリプロ、ゲネプロ、制作の一歩目だからです。電気を使わない楽器を弾く人にとっては、それに何の疑問もありません。

ネットや雑誌を読み過ぎて、まず機材で直す、という間違った癖のついている人は、今すぐ改善して下さい。厳しい様ですが、そんな考えでは結果は出ません。

普段からサウンドの相談を山ほど受ける身としては、こう思います。

一度、エフェクターと音色の迷宮から出て、バンド全体を遠巻きに見てみる時間は、インディーズバンドにとって必要だと思います。

Studio Solaのベースアンプのキャビネットが、
8発入りである理由は、音量と逆の理由です

リハーサルスタジオ内のベースアンプのキャビネットは、バスレフ型キャビネットにスピーカー8発入りのモデルを選んでいます。

大きなキャビネットだから大きな音量を出せると思うのが当然かも知れませんが、理由は音量を稼ぐのとは正反対です。

音は、振動面積が広いほど音量を上げなくても聴こえるようになります。

8発入りである理由は、音場の飽和料を最も越え易い低音楽器であるベースの音量を適切な範囲に保ち他の楽器の少しの変化にも迅速に対応してリハーサルやアレンジが行える環境目指したからです。それを理解して頂いている人だけが、良い音場で演奏しています。非常に耳の良い、音楽を上手く捉えている人たちです。

ベースだけに限らず、音量の上がり下がり、演奏によるトーンの明るさの変化を感じながら仕上げるのがリハーサルやアレンジ、プリプロの作業です。クラッシックをされている人からすれば、『え、それ以外に何かあるんですか?』という話でしょうが、バンドマンという電気を使う人たちはここを勘違いしがちです。大きな音量を出す事が迫力だと勘違いする人があまりに多過ぎます。

初歩の初歩の話なのですが、いつまでも拭えない人もかなり居る様です。

1980年代以降、生音でライブ演奏を聴かせる事は、ほぼ無くなりました。音量も音圧も音響が電気とスピーカーの量で出すものになり、演奏者側の機材で出すものではありません。未だに理解できない人が多いのは、リハスタの機材の破損の数と状況から明らかです。

無意味な爆音でメンバーの演奏すら遮って音が鳴っているだけの人が多過ぎます。結局は、音響が整えて莫大な電力で大きな音にしてくれるわけです。それなら、大きくし易い良い音で送るのが一番ですが、それが理解できない人が大勢居ます。

更に300人収容以下のライブハウスで、ステージのベースアンプの音が客席に聴こえるというほどの愚行はありません。無駄に客席のメンバー全員の音質を劣化させるだけの愚かな行為です。

しかも、大き過ぎるベースの音はバンドのダッキング表現やダイナミクス表現において全体の音量が下がらず、メンバーの表現力の邪魔にしかなりません。

人気機種(というよりさまざまな要因で数が出たという意味)Ampegなどの密閉型キャビネットと違い、ベースアンプや音響機器で最も一般的なバスレフ型を選んでいるのにも理由があります。

出来るだけベースの音量が、部屋の飽和料を超えない様にです。

密閉型で生じ易い『箱鳴り』や『弦のリトリガー』などは、現在の音響機器の整ったライブ会場では全くもって不要な現象です。これを体温や迫力と勘違いするギタリスト、ベーシストが多過ぎます。それらは直進波ではなく、残念ながらマイクに入りません。音源にも入らなければ、客席にも再生されません。その上、音の大部分に音程がありません。不要なだけでなく邪魔な音です。ただただアンプの周囲で空気が詰まりながら揺れているだけの現象です。

くれぐれもこれらを重低音や迫力だと勘違いしないようにして下さい。

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